珈琲と紅茶

ご縁があって、現在松坂屋本館6階のラティスさんにてお茶を淹れさせてもらっています。

接客がメインなので、ホールにも出没しています。

もし遭遇することがあれば、生暖かい目で応援していただけると嬉しいです。(笑)

紅茶専門店 ラティス栄 [レストラン・喫茶] 【松坂屋名古屋店】

ラティスさんの紅茶の取り扱いがあったので、そちらのリンクも貼っておきます。



そして、紅茶に携わる前は珈琲屋さんでも働かせてもらっておりました。

なので少なからず珈琲と紅茶に関して、素人にちょっと毛が生えた程度に知識があるのではないかと踏んでいるのですが…

どちらも本当に奥が深い。

知れば知るほど沼るというのは、こういうことを言うのかもしれませんね。

  1. 紅茶も珈琲も名称は産地
  2. 珈琲にも紅茶にも、それぞれが持つ歴史がある
  3. 珈琲も紅茶も蒸らしは3分
  4. 紅茶発展の経緯
  5. ① 王室と上流階級が流行を作った
  6. ② 大英帝国と東インド会社の存在
  7. ③ 「砂糖+ミルク」との相性の良さ
  8. ④ 水事情と衛生面の理由
  9. ⑤ 気候と生活リズムに合っていた
  10. ⑥ アフタヌーンティー文化の誕生
    1. ■ 国家戦略としての違い
    2. ■ 味とアレンジの相性
    3. ■ 社会的イメージの違い
  11. 1. 上流階級
  12. 2. 中産階級
  13. 3. 労働者階級
    1. ■ 紅茶は「誰もが同じものを飲む」が…
  14. 最後に(3つをつなぐ一言)
  15. タブー視されていた、ポットの蓋を押さえる行為
  16. ① なぜ蓋を押さえるのか(庶民的な理由)
  17. ② なぜ貴族社会ではNGだったのか
    1. ■ 理由①「手=不浄」という感覚
    2. ■ 理由②「器が未完成であることを示す」
    3. ■ 理由③「身体を前に出す=階級が下がる」
  18. ③ 代わりに「正しい」とされた所作
  19. ④ 現代マナーとの違い
  20. まとめ(貴族的価値観)
  21. 珈琲文化の発展について
  22. ① 起源:イスラム世界の宗教的飲み物
  23. ② コーヒーハウスの誕生(公共空間)
  24. ③ ヨーロッパ進出:知性の飲み物へ
    1. ■ 最初は「怪しい東方の薬」
  25. ④ コーヒーハウス文化の爆発(特にイギリス)
  26. ⑤ なぜイギリスでは主流にならなかったのか
  27. ⑥ 大陸ヨーロッパでの進化
  28. ⑦ 植民地化と大量生産
  29. ⑧ 近代:労働と資本主義の飲み物へ
  30. まとめ(紅茶との決定的違い)
  31. 紅茶派とコーヒー派の価値観の違い
  32. ① 時間感覚の違い
    1. ☕ 紅茶派
    2. ☕ コーヒー派
  33. ② 人間関係への姿勢
    1. 紅茶派
    2. コーヒー派
  34. ③ 味覚と価値観
    1. 紅茶派
    2. コーヒー派
  35. ④ 身体の使い方
    1. 紅茶派
    2. コーヒー派
  36. ⑤ 社会との関わり方
    1. 紅茶派
    2. コーヒー派
  37. ⑥ 美意識の違い(重要)
    1. 紅茶派
    2. コーヒー派
  38. ⑦ 紅茶派/コーヒー派は優劣ではない
  39. まとめ

紅茶も珈琲も名称は産地

珈琲も紅茶もどこでとれたのか、産地が名称として付けられています。

珈琲なら、ブラジルと名付けられているものはブラジルでとれたものという意味ですし、紅茶もダージリンはインド北東部のダージリン地方でとれたものという意味になります。



取れた茶葉の標高や気候風土に影響を受け、味や風味が変わっていきます。

標高が高ければ高いほど、酸味などの味の特性が出やすくなります。逆に平地であればあるほど、特出したものはなく平坦な味となります。

なので癖がないものをお求めの場合は、産地が標高が高くなく平坦な場所であればあるほど間違いないということになります!

珈琲にも紅茶にも、それぞれが持つ歴史がある

例えば珈琲にコピルアクというジャコウネコから取れるものを焙煎したものがありますが、なぜそれができたのかという内容を知ると奴隷制度を考えるきっかけにもなります。

紅茶にもそういった歴史的背景を元にストーリーがたくさんあり、それぞれが普及してきた歴史を考えるきっかけになります。



珈琲も紅茶も蒸らしは3分

珈琲も紅茶も流派がそれぞれあり、その派閥によってもそれぞれやり方が異なるとは思います。

ですが、私が関わってきたところは茶葉や珈琲にお湯を浸しておいしくいただくまでに3分。

珈琲は松屋式での淹れ方だったので、珈琲豆にお湯を浸透させて3分蒸らしてからうまみ成分だけを抽出しお湯で割る方法でした。

(うまみ成分のみの抽出になるので、お湯で割ってもアメリカンのように薄くなりません)

3分間蒸らすことでガスを豆全体にいきわたらせて、効率よくガスを抜き淹れる方法でした。

紅茶も熱湯を注ぎ、全体にいきわたるようにして3分蒸らす。

おそらくそれが、一番おいしい紅茶を飲めるタイミングなのだろうと思います。

紅茶も珈琲も時間がたつと酸化や苦み成分が徐々に抽出され、味の変化が訪れます。

時間がたって残らない様に、珈琲も紅茶も一度に飲むためのある程度のお湯の量が決められています。

この量を超えると一度に飲む量としては多いなと思うので、やはり何事も適量というものは存在するなと思います。




紅茶発展の経緯

珈琲と紅茶がどのような経緯で今の形態を持つようになったのか、少し調べてみました。

発展の経緯が違うものの、それぞれの特性が見えてきて面白いです。

まずは紅茶についてです。
イギリスで紅茶文化が発展していって経緯を調べてみました。

① 王室と上流階級が流行を作った

17世紀、ポルトガル王女 キャサリン・オブ・ブラガンザ がイングランド王チャールズ2世に嫁ぎ、
紅茶を飲む習慣を宮廷に持ち込みました。

当時の紅茶は非常に高価で、

  • 王族
  • 貴族
  • 上流階級

の「洗練された飲み物」として広まり、憧れの文化になりました。

② 大英帝国と東インド会社の存在

イギリス紅茶文化を決定づけたのが 東インド会社 です。

  • 中国から大量の茶葉を輸入
  • 紅茶を国家レベルの重要商品に
  • 貿易・税収・外交に直結

紅茶は単なる嗜好品ではなく、帝国経済を支える戦略物資になりました。

③ 「砂糖+ミルク」との相性の良さ

イギリス式紅茶は、

  • 濃く抽出する
  • ミルクを入れる
  • 砂糖を加える

このスタイルは、

  • カリブ海植民地の砂糖産業
  • 酪農が盛んなイギリスの牛乳文化

と結びつき、家庭に定着しやすかったのです。

④ 水事情と衛生面の理由

産業革命期の都市部では、

  • 水は不衛生
  • そのまま飲むと危険

👉 沸騰させる紅茶は安全な飲み物でした。

ビールやジンの代替として、
労働者階級にも広がっていきます。

⑤ 気候と生活リズムに合っていた

イギリスは

  • 寒く
  • 曇りが多く
  • 日照が少ない

温かい紅茶は

  • 体を温める
  • 気分を明るくする
  • 集中力を保つ

という点で、日常に自然に溶け込みました

⑥ アフタヌーンティー文化の誕生

19世紀、貴族女性 アンナ・マリア・ラッセル(ベッドフォード公爵夫人) が、

「夕食までお腹が空く…」

として始めた軽食+紅茶の習慣が、
アフタヌーンティーとして定着。

これが

  • 社交
  • マナー
  • 儀式性

を持つ文化へと発展します。

イギリスの紅茶文化は、

帝国の力 × 王室の影響 × 生活の実用性

が噛み合って生まれた、
「嗜好品でありながら生活必需品」になった文化です。

なぜコーヒーではなく紅茶だったのか

結論から言うと、
「国家戦略・味の適応性・家庭への浸透力」の違いです。

■ 国家戦略としての違い

  • 紅茶
    → 東インド会社が独占・管理できた
    → 中国・のちにインドやセイロンで大規模生産
  • コーヒー
    → 主にオスマン帝国・中東経由
    → イギリスの政治的影響が弱い地域

👉 紅茶は「イギリスが支配できる飲み物」だった。

■ 味とアレンジの相性

  • 紅茶:ミルク・砂糖と相性が良い
  • コーヒー:当時は苦味が強く、ブラック中心

イギリスでは

  • 砂糖(植民地)
  • 牛乳(国内酪農)

が豊富だったため、
紅茶のほうが「家庭向け」だった

■ 社会的イメージの違い

  • コーヒー → 男性・議論・政治・知識人の場
  • 紅茶 → 家庭・女性・社交・日常

👉 イギリスは「家庭文化」を重視する社会だったため、
紅茶が主流になった。

紅茶と階級社会の関係

紅茶は、イギリスの階級社会を可視化する飲み物でした。


1. 上流階級

  • 高級茶葉(ダージリン、アッサム初期)
  • 磁器(ボーンチャイナ)
  • 銀のティーポット
  • 正しいマナー

👉 紅茶=「教養と格式」の象徴

2. 中産階級

  • ティーセットを揃える
  • アフタヌーンティーを真似る
  • マナー本が流行

👉 紅茶=上流階級への憧れ

3. 労働者階級

  • 安価で濃い紅茶
  • 砂糖たっぷり
  • ミルク多め

👉 紅茶=栄養と活力源

(カロリー補給+安全な飲み物)

■ 紅茶は「誰もが同じものを飲む」が…

  • 茶葉の質
  • 所作
  • 時間帯

で、階級差が明確に出る

👉 同じ紅茶でも、
飲み方が身分を語った

最後に(3つをつなぐ一言)

イギリスの紅茶は、

国家が広め
家庭に根づき
階級を映し出す

「社会そのものを映す飲み物」でした。

タブー視されていた、ポットの蓋を押さえる行為

「ポットの蓋を手で押さえる行為は、貴族的には“明確に下品・タブー”とされていました。」

理由は単なるマナーではなく、階級意識・身体観・器の思想に関わります。

① なぜ蓋を押さえるのか(庶民的な理由)

実用面では合理的です。

  • 注ぐときに蓋が落ちないように
  • 安価なポットは蓋が軽くズレやすい
  • 労働者階級や家庭では普通の動作

👉 機能優先の動き

② なぜ貴族社会ではNGだったのか

■ 理由①「手=不浄」という感覚

18〜19世紀の上流階級では、

  • 食器に手を直接触れない
  • 手は「労働・身体」の象徴

という考えが強く、

👉 器の“口”に近い部分に手を置く行為は不潔とされた。

■ 理由②「器が未完成であることを示す」

貴族のティーセットは

  • 蓋が落ちない設計
  • 注ぎやすい重心
  • 高価な磁器

つまり、

蓋を押さえる=
「このポットは不出来です」と言っているようなもの

👉 道具を信用しない動作=無作法。

■ 理由③「身体を前に出す=階級が下がる」

貴族的所作の基本は

  • 動かない
  • 静か
  • 最小限の動き

蓋を押さえるために

  • 手を大きく動かす
  • 身体が前に出る

これは
👉 召使いや給仕の動きと同一視された。

③ 代わりに「正しい」とされた所作

貴族社会では:

  • ポットは完全に信頼する
  • 蓋には触れない
  • 片手で静かに注ぐ
  • 落ちるなら「それは器が悪い」

👉 落とさないのではなく、
落ちない前提で扱うのが貴族的。

④ 現代マナーとの違い

現代の紅茶マナー本では、

  • 押さえてもOK
  • ただし軽く、目立たず

とされていますが、これは
実用性に寄った後世の緩和です。

まとめ(貴族的価値観)

蓋を押さえる行為は、

「器を信用していない」
「手仕事を前面に出している」
「身体性が強すぎる」

と受け取られ、
貴族社会では明確に避けるべき所作でした。

珈琲文化の発展について

珈琲はキメるための飲み物という話も聞いたことがあります。
ビジネス的なイメージの強い飲料ではありますが、珈琲の発展についても調べてみました。

① 起源:イスラム世界の宗教的飲み物

コーヒーの始まりは 15世紀頃のイスラム世界(イエメン) です。

  • スーフィー(神秘主義者)たちが
    👉 夜の祈りで眠気を避けるために飲用
  • アルコール禁止社会での
    👉 「合法な覚醒飲料」

☕ コーヒー=精神集中のための飲み物

② コーヒーハウスの誕生(公共空間)

16世紀、オスマン帝国で コーヒーハウス(カフヴェハネ) が誕生。

そこは:

  • 詩の朗読
  • 政治議論
  • 商談
  • 将棋・ゲーム

が行われる知的社交場でした。

👉 支配者から
「思想が生まれる危険な飲み物」
として警戒され、禁止されたこともあります。

③ ヨーロッパ進出:知性の飲み物へ

17世紀、コーヒーはヨーロッパへ。

■ 最初は「怪しい東方の薬」

  • 黒い
  • 苦い
  • イスラム由来

👉 キリスト教社会では警戒。

しかしローマ教皇が

「これは悪魔の飲み物にしては美味すぎる」
として容認した、という逸話も。

④ コーヒーハウス文化の爆発(特にイギリス)

ロンドンでは急速に普及。

  • 「一杯のコーヒーで入れる大学」
  • 新聞・保険・株取引の発祥地
    • ロイズ保険
    • ロンドン証券取引所

☕ コーヒー=男性・理性・議論・ビジネス

⑤ なぜイギリスでは主流にならなかったのか

ここが紅茶との分岐点です。

コーヒー紅茶
公共空間家庭
男性中心女性・家族
覚醒休息
議論社交
苦味甘味調整可

👉 イギリス社会は
「家庭の安定」を重視したため、
紅茶が日常に残り、コーヒーは脇役に。

⑥ 大陸ヨーロッパでの進化

一方で:

  • フランス:文学・哲学の場
  • オーストリア:ウィーン・カフェ文化
  • イタリア:エスプレッソ革命

コーヒーは
👉 都市文化・知性・芸術と結びつき発展。

⑦ 植民地化と大量生産

18〜19世紀、

  • オランダ → インドネシア
  • フランス → カリブ
  • ポルトガル → ブラジル

へと栽培が広がり、

☕ コーヒー=世界商品(コモディティ)

に変化。

この過程で

  • 奴隷労働
  • プランテーション

という暗い側面も生まれました。

⑧ 近代:労働と資本主義の飲み物へ

産業化以降、

  • 即効性の覚醒
  • 短時間で飲める
  • 集中力アップ

👉 工場・オフィス・都市生活に適合。

20世紀には

  • インスタントコーヒー
  • チェーン店
  • テイクアウト文化

へと進化します。

まとめ(紅茶との決定的違い)

紅茶

社会を「和らげ、つなぐ」飲み物

だったのに対し、

珈琲

社会を「動かし、加速させる」飲み物

でした。

紅茶派とコーヒー派の価値観の違い

紅茶派/コーヒー派の違いは、味の好み以上に「世界の捉え方」の違いを映しています。

結論から言うと、

紅茶派=調和・間・関係性の人
コーヒー派=目的・速度・個の人

です。

① 時間感覚の違い

☕ 紅茶派

  • 蒸らす時間を待つ
  • ティータイムという「区切り」を大切にする
  • 時間を 整える・味わう

👉 時間は「流れ」

☕ コーヒー派

  • 抽出は速い
  • 仕事の合間に飲む
  • 時間を 使う・切り取る

👉 時間は「資源」

② 人間関係への姿勢

紅茶派

  • 誰かと飲む前提
  • 会話を生む
  • 空気を和らげる

👉 関係性重視

コーヒー派

  • 一人でも成立
  • 思考を深める
  • 集中を助ける

👉 自己完結型

③ 味覚と価値観

紅茶派

  • 砂糖・ミルクで調整
  • バランスを取る
  • 優しさ・包容

👉 世界は「調和可能」

コーヒー派

  • 苦味を受け入れる
  • 素材そのもの
  • 切れ味・覚悟

👉 世界は「厳しいが意味がある」


④ 身体の使い方

紅茶派

  • 姿勢を崩さず
  • 小さな動き
  • 儀礼的

👉 静的・内省的

コーヒー派

  • マグを掴む
  • 立ったまま
  • 実用的

👉 動的・即応的


⑤ 社会との関わり方

紅茶派

  • 社会の潤滑油
  • 和解・社交
  • 階層をなだらかにする

👉 社会を保つ

コーヒー派

  • 批評・議論
  • 革新・改革
  • 権威に挑む

👉 社会を動かす


⑥ 美意識の違い(重要)

紅茶派

  • 器・色・香り
  • 余白・雰囲気
  • 「美しさ」を共有

👉 美は 場に宿る

コーヒー派

  • 焙煎・抽出
  • 技術・理屈
  • 「正しさ」を追求

👉 美は 結果に宿る


⑦ 紅茶派/コーヒー派は優劣ではない

これは性格診断ではなく、

  • 社会を整える力(紅茶)
  • 社会を前に進める力(珈琲)

という役割の違いです。

実際、

  • 午前:コーヒー
  • 午後:紅茶

という人も多いのは、
👉 人間が両方を必要とするから。


まとめ

  • 紅茶派:世界を「円くする」
  • コーヒー派:世界を「切り拓く」

あなたは珈琲を好みますか?それとも紅茶を好みますか?
それとも両方を必要としますか?

どちらも特性があり、それぞれに必要な飲みものとして存在しています。

今どちらが自分にとって必要なのかを知ると同時に、周りの世界がどうなっているのかを知るのも楽しいですね。

ゆっくりとした時間を確保すること、スピーディーな展開に身を任せること。

どちらもが必要に応じて、必要な時に体感することが大切なのかもしれません。




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